ビジネスにおける優先順位の付け方とは?5つのフレームワークをご紹介

ビジネスにおける優先順位の付け方フレームワーク

社会の変化するスピードに対応し、新しい価値を生み出すためには、重要なことに集中して事業を進める必要があります。限られたリソースを活用して最大の成果を上げるためにも、優先順位を適切に設定することが求められます。ここでは、ビジネスにおける優先順位付けに役立つ5つのフレームワークをご紹介します。

目次

①緊急度/重要度マトリクス(アイゼンハワーマトリクス)

緊急度/重要度マトリクス(アイゼンハワーマトリクス)は、アメリカの第34代大統領アイゼンハワーによって考案され、後に『7つの習慣』のスティーブン・R・コヴィー氏が再構築し広めたフレームワークです。単にタスクを列挙するのではなく、緊急度と重要度の2軸でタスクを分類し、優先順位を明確にできるのが特徴です。

アイゼンハワーマトリクス

(A)重要かつ緊急タスク: 最優先で取り組むべきタスクが入ります。締め切りが差し迫った重要案件など、最優先で着手が必要なものが該当します。
(B)重要だが緊急ではないタスク: 重要だが期限に余裕のあるタスクが入ります。長期的な目標達成に必要なものの、期限が先のため後回しにしがちな領域です。適切に期限を設定してスケジュール内で確実に実行に移すことが大切です。
(C)重要ではないが緊急のタスク: 緊急性はあるものの重要度は低いタスクが入ります。できる限り外部に任せるなどして関わる時間を最小限に抑え、A・Bの領域のタスクに集中するのがポイントです。
(D)重要でも緊急でもないタスク: タスクから削除すべき時間の無駄となる作業が入ります。業務の効率化のためにも思い切って排除することが求められます。

このマトリクスを用いることで、タスクの性質を可視化し、メリハリのある優先順位付けが可能になります。日々意識して活用することで、本当に重要なタスクに集中しやすくなるでしょう。

②ICEスコアリングモデル

ICEスコアリングモデルは、グロースハックの概念を作り上げたSean Ellisが開発した、アイデアやプロジェクト案を評価し優先順位付けする手法です。

ICEスコアリングモデル

このモデルは影響度、信頼度、および実現の容易さの3つのセットの測定によって評価します。それぞれのアイデアに対して1~10の相対スコアを付け、3つを積を算出した値がICEスコアとなります。

ICEスコアリングモデル例

各評価軸の基準は以下の通りです。
Impact: そのアイデアを実行した際にどれだけのインパクトが見込めるか(1〜10点)
Confidence: そのアイデアがポジティブな結果につながる確信度合い(1〜10点)
Ease: 現在のリソースでそのアイデアをどれだけ容易に実行できるか(1〜10点)

例えば、影響度8点、信頼度7点、容易さ2点のアイデアのICEスコアは、8✕7✕2=112 になります。ICEスコアの高いアイデアから優先して実行することで、限られたリソースを有効に活用しながら効果的にプロジェクトを推進することができるでしょう。

ただし、スコア付けには主観的な判断が入りやすいため、メンバー複数人でスコアリングして平均点を算出するなど、できるだけ客観性を担保する工夫も必要です。

③Value vs. Effortマトリクス

Value vs. Effortマトリクスは、タスクの価値と必要な労力の2軸でマッピングを行い、優先順位を決めるフレームワークです。タスク完了時の価値と、それに必要な工数を評価し、4つの領域に分類します。

Value vs. Effortマトリクス

(1)Quick Wins(高価値×低工数): 少ない労力で大きな成果が見込めるタスクで、特に短期的な成果を重視する際に優先すべき領域です。
(2)Big new features(高価値×高工数): 大きな価値が期待できるものの、多くの工数が必要なタスクです。基本的にはQuick Winsの次に優先します。
(?)Maybes(低価値×低工数): 実行したとしても高い成果は見込まれないため、余裕がある場合に(1)、(2)の合間に行います。
(×)Time Sinks(低価値×高工数): 多くの工数がかかるわりに価値が低いタスクで、優先度は最も低くなります。場合によっては対応自体を見送ることも必要です。

このマトリクスを用いることで、「早く価値を出せるものから着手する」「労力の割に価値の低いタスクに労力を割かない」といった判断が下しやすくなります。ただし、価値と工数の定義があいまいだと適切なマッピングが難しくなるため、事前によく議論しておくことが大切です。

④マッキンゼーの優先順位付けアプローチ

コンサルティングファームのMcKinsey & Companyは、プロジェクトとリソースの割り当てを最適化し優先順位付けをするためのフレームワークを公開しています。Value vs. Effortマトリクスに戦略的観点も加えより精緻化したものになります。このアプローチを導入したハイテク企業は開発費の20%を削減し、成長分野に投資が可能になったとしています。

マッキンゼーの優先順位付けアプローチ

1.リソース需要とデータを収集: 成長、コスト削減、イノベーション、保守のプロジェクト・タスクに必要となるリソースが全社でどの程度あるのか正しいデータを収集し整理します。ファクトとなるデータは正しい評価をするために重要です。また、サイドプロジェクトや緊急対応に使用されるリソースは総リソースの20~30%を超えていないことを定期的にチェックします。
2.客観的なルールに基づき優先順位付け: ファクトベースでそれぞれのタスク・プロジェクトを客観的なルールに基づいて優先順位付けをします。価値指標はNPV(正味現在価値)を利用しますが、進行中のプロジェクトはサンクコストも加味する必要があるため注意しましょう。その他の指標として、リスク、テクノロジーの魅力、立上げ時間、戦略的重要性などがあります。
3.リソースの制限を理解: 各タスク・プロジェクトにリソースの初期マッピングを行い、ギャップを理解します。
4.戦略的な評価を実施: 戦略的な評価を行い、優先順位の調整をします。短期的な収益観点に加え長期的な成長目標を達成するために優先順位を変更していきます。(例えば今後成長期待の高い市場への参入であれば収益性が低くとも優先順位を高くする)
5.リソースを割り当て計画をアップデート: 戦略評価に基づいて、リソースを再分配します。
6.実行:データによりファクトベースでかつ戦略的に決められた優先順位に基づいてタスク・プロジェクトを実行します。

フレームワークによる評価例

マッキンゼーの優先順位付けアプローチ例

このアプローチの特徴は、財務的視点だけでなく戦略的視点を取り入れている点にあります。また、リソース配分まで踏み込んでいるため、優先順位付けの実効性も高いと言えるでしょう。

⑤ボストンコンサルティングの優先順位付けアプローチ(DICE framework)

ボストンコンサルティンググループ(BCG)は、プロジェクトの成功確率を予測し、優先順位付けを行うためのフレームワークとしてDICEを開発しました。Duration(期間)、Integrity(チームの有能さ)、Commitment(コミットメント)、Effort(追加労力)の4つの評価軸から優先順位を導き出します。

ボストンコンサルティングの優先順位付けアプローチ(DICE framework)
ボストンコンサルティングの優先順位付けアプローチ(DICE framework)スコア

Duration: タスクのサイクルが短いほど高評価
Integrity: チームのスキル・経験値が高いほど高評価
Commitment: トップマネジメント層と現場メンバーのコミットメントが揃っているほど高評価
Effort: 日常業務に対する追加労力が少ないほど高評価

スコアの解釈
各評価項目について4段階で点数を付け、合計点から優先度を判断します。
健全(Win Zone):スコアが14未満の場合は、成功の可能性が高いことを示しています。優先順位は高く実行すべきでしょう。
懸念(Worry Zone):スコアが中央(14~17の間)の場合は、成功に懸念が示されています。やり方を見直す必要があります。
危険(Woe Zone):17を超えるスコアは成功の可能性が低い状態です。タスク・プロジェクトの削除を検討しましょう。

DICEフレームワークの特徴は、プロジェクト成功に不可欠な要素をバランス良く評価している点にあります。スコアリングの結果をチーム内で議論することで、プロジェクトの課題を可視化することにも役立ちます。

まとめ

ビジネスにおける優先順位付けに役立つ5つのフレームワークを紹介しました。いずれも、限られたリソースを最大限に活用するための思考法と言えます。優先順位付けにおいては、このようなロジカルなフレームワークと、事業環境や自社の強みといった状況に対する理解の両面が求められます。

これらのフレームワークを状況に合わせて使い分け、タスクの「選択と集中」を的確に行うことが、事業の成功につながるでしょう。より精度の高い意思決定のためには、それぞれのタスクについて十分なデータを収集し、客観的な視点を持つことも重要です。

ぜひ日々の業務の中でこうしたフレームワークを実践し、より価値あるタスクに集中する習慣を身につけていきましょう。

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