Product Market Fit(PMF)とは何か?基礎から達成に向けてのステップを解説

スタートアップや新規事業にとって最も重要なProduct Market Fit(PMF)とは何か?

Product Market Fit(PMF)は、近年スタートアップエコシステムや新規事業で利用されている概念で、スタートアップが成功するための唯一必要な条件とされています。本記事では、PMFの定義や、達成のステップ、定量的に測定する方法について解説します。

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目次

Product Market Fit(プロダクトマーケットフィット)とは

PMFとは何か

マークアンドリーセン
Marc Andreessen (出典:flickr

Product Market Fit(PMF)とは、「良いマーケットに対して、そのマーケットニーズを満たすことができるプロダクトがあること」を意味します。この概念はシリコンバレーで最も有名なVCのひとつである「a16z」のベンチャーキャピタリストであるMarc Andreessenがエッセイで書いたことから広まりました。

また、この定義には二つの構成要素があることが分かります。

・良いマーケットでビジネス活動を行うこと
・ニーズを満たすプロダクトを開発すること

良いマーケットとは、簡単に言えば「成長している市場(その兆しが見える市場)」のことです。成長市場に対してニーズに沿った製品を投入していく、もしくは兆しが見える市場に対して仮説的な製品を投入し検証することが基本戦略になります。

また、ニーズについては以下の記事をご参照ください。

(補足)PMFのコンセプト化経緯

上述の通り、PMFを世に広げたのはMarc Andreessenと言えます。しかし、実際にこのPMFのコンセプト化は米国VCのベンチマークキャピタル及びWealthfrontの創業者であるAndy Rachleffによって行われました。経緯は以下のページに詳細がありますので参考ください。

>>アンディ・ラフレフ「製品市場に適合したかどうかを知る方法」について

なぜProduct Market Fit(PMF)が重要なのか?

世界最大級のスタートアップとVCのデータベースを持つCBインサイトの調査によると、スタートアップが失敗する最大の原因は「マーケットニーズがなかったから」とされています。

スタートアップが失敗する理由TOP20

スタートアップが失敗する最大の原因

また世界で最もユニコーン企業を輩出しているY Combinatorの共同創業者であるPaul Grahamインタビューでこう語っています。

Probably the biggest cause of failure is not making something people want. The biggest reason people do that is that they don’t pay enough attention to users.

おそらく失敗の最大の原因は、人々が望むものを作らないことです。人々がそうする最大の理由は、ユーザーに十分な注意を払っていないからです。

このように、スタートアップ投資に長けているVCの考察やリサーチ会社の調査結果から、マーケットニーズを満たすプロダクトを構築すること、つまりPMFが最も重要という認識がスタートアップや新規事業のエコシステムで醸成されてきています。

PMFとPSFの違いは?

新規事業開発のステップの一部としてPSF(Problem Solution Fit)というワードが出てくることがあります。PSF(プロブレムソリューションフィット)は「課題に対して解決策が適合している状態」を指します。PMFは「製品が市場に適合している状態」を現すことから、PSFはPMFの前のステップに当たります。

PMFが実現された状態とは?

PMFが実現されるとどういった状態になるのでしょうか。Marc Andreessenは、PMFが実現された状態を以下のように特徴づけています。

You can always feel when product/market fit isn’t happening. The customers aren’t quite getting value out of the product, word of mouth isn’t spreading, usage isn’t growing that fast, press reviews are kind of “blah”, the sales cycle takes too long, and lots of deals never close.

And you can always feel product/market fit when it’s happening. The customers are buying the product just as fast as you can make it — or usage is growing just as fast as you can add more servers. Money from customers is piling up in your company checking account. You’re hiring sales and customer support staff as fast as you can. Reporters are calling because they’ve heard about your hot new thing and they want to talk to you about it. 

PMFしていない時はいつでも分かります。顧客は製品の価値を十分に感じていないし、口コミは広がっていない、製品の利用もそれほど急速に伸びていない、プレスのレビューもちょっとしたものでしょう。

そしてPMFが起これば、すぐに分かります。顧客は製品を作るとすぐに購入し、サーバーを増やすのと同じくらいの速さで利用量が増えます。顧客からの収益で会社の銀行口座は積み上げられ、あなたは出来るだけ早く営業とカスタマーサポートを雇います。メディアからの連絡も鳴りやまないでしょう。

Part 4The only thing that matters

PMF達成に向けてのステップは?

PMFを達成するにはどのようなステップで進めれば良いでしょうか?『The Lean Product Playbook』の著者であるDan Olsenは、PMF達成に向けてのフレームワークとステップを公開しています。

Product-Market fit ピラミッド

Product-Market fit pyramid
出所:mindtheproduct

step1.ターゲット顧客を明確にする

誰のどんなニーズに対して製品を提供していくのか。ターゲットとなる顧客を定義することは、製品開発、PMFへ向けての第一歩になります。ターゲットを設定するために、具体的なマーケットセグメンテーションを行い把握していきます。実際にターゲットとするセグメンテーションが決定したら、その顧客のペルソナを作成していきます。最初から完璧なペルソナを作ることは難しいですが、この後のニーズの具体化やチームでの認識を合わせるために仮説として持っておき、ステップを進めるごとに修正をしていけば問題ありません。

step2.十分に満たされていないニーズを特定する

二つ目のステップはターゲット顧客のニーズを理解することです。どのような価値を提供すればニーズが満たせるか、つまりニーズによって提供価値が変わるため、理解と特定は重要となります。

また、仮にニーズがあったとしても、それが既に既存の製品で満たされている場合は、参入メリットは少ないでしょう。そのため、ニーズの有無の確認と同時に、それがどの程度満たされているかどうかのチェックがこのステップでは必要となります。

step3.価値提案(バリュープロポジション)を定義する

バリュープロポジションとは、ニーズに対してどのような価値が提供できるか、それは他社よりどのように優れいているかを明文化したものです。ニーズを満たす・顧客が満たせるかもしれないと考える価値提案とはどのようなものでしょうか。このステップでは、ニーズと代替品から最適なバリュープロポジションを検討する必要があります。

step4.最小実行可能製品(MVP)の機能を特定する

バリュープロポジションが明確になれば、次のステップとして最小実行可能製品(MVP)に必要となる機能を特定します。必要そうな機能すべてを製品に詰め込むとなると、膨大な時間と工数がかかるでしょう。また、顧客にとっては本当は必要でない機能も出てくる可能性もあるため、特定したニーズを満たす最小の機能を特定していきます。

step5.MVPプロトタイプを構築する

MVPの検証を進めるためには、実際に顧客からフィードバックを得る必要があります。そこで顧客が製品の画面を具体的にイメージできるコンセプト資料やモックアップを作成していきます。MVPをすぐさま構築するのではなく、それを構築せずとも検証できるポイントがあれば、プロトタイプを作り進めることが賢明です。近年ではFigmaなどのプロトタイピングツールが多く生まれており、ノーコードに近い形で構築することが可能になっています。

step6.MVPを顧客でテストする

MVPもしくはプロトタイプが構築できたら、顧客でテストを開始します。ここで検証する相手は、実際の顧客になり得る人で行うことが重要です。ターゲット外の顧客でテストしフィードバックをもらったとしても、本当にニーズを満たすことが出来る製品になり得るかは難しいでしょう。よって、可能な限りステップ1で特定したターゲットに近い顧客を集めてテストをしてもらう必要があります。

また、このステップではフィードバックをもらい製品の修正を行うことによって、当初のニーズを満たせる(≒有料で購入する)までの完成度を目指していきます。

PMFを定量的に測定する方法は?

ここまでの説明で少し曖昧さが残るPMFを、定量的に測定するにはどうすればいいでしょうか。ここではHubSpotのグロースマネージャーを担当していたBrian Balfourのフレームワークを紹介します。彼はスケールの前に、①先行指標、②エンゲージメント、③リテンションの3つのデータを見ることを推奨しています。またそのデータの取得→解釈→アクションを継続的に行うことが重要であると述べています。

①先行指標

一つ目のチェックポイントは先行指標です。これは実際に製品から収益があがったり、使い続けられているかという結果を表す「遅行指標」ではなく、予め上手くいくかどうかの判断に用いることができる指標になります。

①-a. Product/Market Fit Survey(Ellis Test)

Dropboxのグロースを行ったSean Ellisが開発した手法で「この製品(サービス)がもう利用できなくなったとしたら、どう思いますか?」という質問をユーザーに行います。そして成功の尺度は大変残念が40%を超えることとしています。

この製品(サービス)がもう利用できなくなったとしたら、どう思いますか?
1. 大変残念
2. まあまあ残念
3. 残念ではない

2020年12月に約2.8兆円でSalesforceに買収されたSlackは、この調査とデータに基づく分析・改善アクションを繰り返し行い、スケール前に51%の数値を獲得しました。

①-b. NPS(ネットプロモータースコア)

NPSは、ユーザーの満足度を測定する方法であり、成長の指標として多くの企業で使用されています。

NPSスコア

NPS
出所:nttcom

②エンゲージメント

ユーザーがどのように製品やサービスを利用しているか。規則性は持っているのか、ユーザーは一部に偏っているか、毎日利用しているか、どのくらいの頻度か。これらのデータはユーザーが製品やサービスを利用している証拠であり、プロダクトを好きかどうかという先行指標を補完してくれます。

これは例えばInstagramであれば、ユーザーが毎日どの程度の写真をアップしているかやログインしている頻度のことを指します。

③リテンション

ユーザーが製品を好きであれば、繰り返し利用します。リテンション(曲線)はそれを測定するための重要な分析手法です。時間の経過に伴うアクティブユーザーの割合をプロットしてリテンション曲線を作成します。ユーザーが戻ってくると曲線は平らに近づきます。

リテンションカーブ
出所:brianbalfour

まとめ

Product/market fit isn’t a one-time, discrete point in time that announces itself with trumpet fanfares.

PMFは、トランペットのファンファーレで発表されるような一度限りのものではありません。

ー a16z   Ben Horowitz

日本においてもスタートアップや新規事業部を中心にPMFの概念は広まりつつあります。しかし、PMFを実現するためのフレームワークや、データドリブンで行う考え方は萌芽段階です。また、Ben Horowitzが言うようにPMFは一度達成すれば終わりというわけではなく成長の各フェーズで継続的にデータ取得→解釈→改善アクションを行うことが不可欠です。今後もPMF実現の詳細手法、日本での取組み事例を紹介していければと思います。

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