メタバースとは何か?ビジネスにおける意味と活用事例を基礎から解説
2022年において、メタバース(Metaverse)はビジネスにおける流行語になっています。この大きな流行は、FacebookがMetaへ社名を変更し、年間1兆円を超える金額をメタバースに投資すると発表して興りました。活況を見せている一方で、メタバースとは何なのか、ビジネスの事例にはどのようなものがあるかについては情報の整理と考察が必要な状況です。
そこで今回の記事では、メタバースの基礎から実際のビジネスにおける事例までを解説していきます。
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メタバースとは何か?
メタバースの定義
メタバース(Metaverse)とは、1992年に作家のニール・スティーブンソンが仮想現実の世界を表現するために作った造語です。一般的には、メタバースは、人々が仮想のアバターを通じて交流し、ビジネスを行い、社会的なつながりを築くことができる3次元仮想世界のネットワークとみなされています。しかし、現在のビジネスにおいて合意された定義はまだないという認識を持つ必要があります。
メタバースの5つの特徴
ではメタバースはどのような特徴を持っているでしょうか。定義と同様に特徴もまだ定まっていませんが、メタバースは主に、永続性、無限性、自立性、相互運用制、リアルタイム性の5つの特徴を持っているとされています。
①永続性
メタバースは、ユーザーの物理的な存在に関係なく存在します。
②無限性
メタバースは仮想空間のため、理屈上は無限に構築することが可能です。ユーザーは無数の仮想空間と繋がることが出来ます。
③自立性
自立性とは、ユーザー自身がメタバース空間で金銭を獲得し、物の購入など経済的な取引を行えることを意味します。
④相互運用性
相互運用性とは、ユーザー自身がアバターなどの仮想のアイテムをあるメタバース空間から別のメタバース空間に移動させることを一定サポートすることを前提とします。
⑤リアルタイム性
リアルタイム性とは、時間の進行や、行動に対するリアクションがリアルタイムに限りなく近く、ユーザーがライブ感を味わうことを意味します。
ただし、これら上記の特徴については、メタバースや技術の進展により変化していくと考えられます。
メタバースで知っておくべき技術や用語は何か?
仮想現実(VR):Virtual Reality
仮想現実(VR)は、一般的にゴーグルやヘッドマウントディスプレーなどのVR機器を装着することによって提供される疑似体験であり、ユーザーは仮想現実内でリアルな画像、音、その他の感覚を投影することができます。VR機器を使用することにより、仮想世界を見て回ったり、他のユーザーと会話することができます。
拡張現実(AR):Augmented Reality
拡張現実(AR)は、実在する空間(風景や物など)に映像、音、感覚データ、嗅覚データなどのデジタルデータを重ねて映し出すことによって現実世界を仮想的に拡張することです。ARは、「現実世界と仮想世界をシームレスに統合させる役割」や、「現実世界とリアルタイムでインタラクションができる」、「スマートフォンなどでサービスを提供できること」が特徴として挙げられます。
ブロックチェーン:Blockchain
ブロックチェーンは分散型台帳とも言われ、ネットワーク上の端末同士で接続し、取引の記録を暗号秘術を用いて分散的に処理するデータベース技術の一種です。この技術をベースとして暗号資産も作られており、メタバースにおいて資産のやり取りを安全・効率的にする場合に重要な要素となっています。
5G:5th Generation
5Gは「5th Generation」の略で、次世代の通信規格です。5Gは高速・低遅延・多数同時接続の特徴を持っており、これは、メタバースのリアルタイム性などを実現するために必須となる技術です。場所を選ばずメタバースに参加するにはハード以外に通信環境も重要となります。
仮想世界:Virtual World
仮想世界とは、コンピューター上で作られた、多くのユーザーがアクセスでき、アバターと呼ばれる仮想空間上の個人を使って同時かつ独立して世界を探索できるシミュレーション空間です。仮想世界では、ユーザーの動きや感情をリアルタイムで取り込み、仮想空間上で再現(同期)します。多人数参加型のオンラインゲームが近いイメージとなり、仮想世界でユーザーは、自分たちで世界を構築し交流をしています。
仮想経済:Virtual Economies
仮想経済(バーチャル・エコノミー)は、これまで単にオンラインゲーム内でのデジタルアイテムの交換や販売を指す言葉として使われてきました。しかしメタバースの進行により、仮想経済は「暗号資産や現実の通貨による取引」だけでなく「通貨の発行」まで、現実で行われている金融システムがそのまま行われるようになってきています。一方でこうした金融取引は今後規制が行われる可能性があり、誰が管理するのか、どこまで行えるかは不透明な状況です。
メタバースは今後どの程度のスピードで進むのか?
メタバースの進行スピードはどの程度か?このセクションではマイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏とシンクタンクの予測をご紹介します。
ビル・ゲイツ氏の予測
ビル・ゲイツ氏は、「今後2〜3年以内に、会議の大部分がメタバースで行われると予測している」と彼のブログの中で述べています。一方で、「実際に仮想空間で人と会うには、VRゴーグルやモーションキャプチャグローブなどが必要であるが、ほとんどの人はまだこうしたツールを持っていない」とも言及しており、ハードの普及もメタバース化に向けての要件の一つになることが窺えます。
シンクタンクの予測
Metaに代表されるテックジャイアントのメタバースへの巨額の投資も相まって、2024年までに市場が8,000億ドル~1兆ドルになるとも言われており、今後急激に拡大することを予測しているシンクタンクやコンサルティング会社は多く存在しています。100年の歴史を持つ自動車産業で市場規模が約400兆円とされているので、いかに急激に市場が拡大すると予測されているかが分かるかと思います。
▼参考:「メタバースは8000億ドルの市場、次の技術プラットフォームになる可能性」(Bloomberg)
▼参考:「2028年までに5,000億ドルを超える価値のあるメタバース市場規模」(Global Market Insights)
メタバースのビジネスにおける利用方法や活用事例は?
没入型エンターテインメント・イベント
メタバースの利用例の中でも一歩進んでいるのがエンターテインメントやイベントになります。企業としてはリアルで行っているイベントをメタバース内で実現することにより、より没入感のある体験をユーザーに提供することができます。例えばBtoC向けの商品であれ、BtoBの製品であれ、オンラインで商品を見るだけでなく、リアルに近い感覚で体験することによって購買率を高める効果があると考えられます。
また、音楽業界では、既にジャスティン・ビーバーをはじめ、多くのアーティストがメタバース内でライブを開催するなど、利用が進んできています。
▼参考:ジャスティン・ビーバーが“メタバース”上でライブを開催(hypebeast)
教育とトレーニング
これまで対面・実地で行われていた学校や企業の現場研修はパンデミックによりオンライン化が進みました。これは効率化をもたらしている一方で、現場で体験することにより理解できることへの制限も余儀なくされています。こうした事態の解決にメタバースの活用が進み始めています。
VR・メタバースを利用することによって、ユーザーは例えば「営業での話し方」、「発電所での安全な作業の仕方」、「モチベーションをあげる従業員同士の会話」などの様々な場面のシナリオをリアルに近い形で学習できるようになります。
事例として米国のスタートアップであり外科技術会社のMedivisは、MicrosoftのHoloLens技術を使用して、3D解剖学モデルとのインタラクションシステムを構築し、医学生を訓練しています。また、製造大手のボッシュと自動車大手フォードモーターは、Oculus Questヘッドセットを使用して、電気自動車のメンテナンスに関する技術者をトレーニングするVRトレーニングツールを開発しています。
▼参考:「フォードとボッシュがバーチャルリアリティを使って電気自動車「マスタング」の技術者を訓練する方法」(Bosch)
ビジネス会議
メタバースのビジネス利用例として現状最も挙げられているものが「ミーティング」です。ビル・ゲイツが述べた通り、数年で会議の大部分がメタバースに移行する可能性があります。Zoomなどの画面越しのオンラインミーティングでは伝わらない、本来情報として必要なボディランゲージや仕草、細かな表情をメタバースで再現することが出来れば、よりよいミーティングに繋がることは間違いありません。一方で参加者全員が高精度なツールや環境を整える必要があるため、「気軽に利用」までは至っていないのが現状です。
▼参考:「仮想空間メタバースで「仕事」をしてみたら…想像以上に実用レベルで驚いた」(BUSINESS INSIDER)
メタバース不動産
メタバースでの不動産投資も熱を帯びてきています。世界的ラッパーのスヌープ・ドッグをはじめとするスーパースターや、JPモルガン、HSBC、サムスンなどのグローバル企業もメタバース不動産に参入してきています。
現在最大のメタバースプラットフォームであるDecentralandやSandboxでは、土地の平均価格が一年足らずで、1,000ドル未満から13,000ドルに上昇しています。上昇率などを考えると、現実の不動産より投資価値が出る可能性があります。
▼参考:「メタバースでスヌープ・ドッグの隣人になるために45万ドルを支払った人がいる」(FORTUNE)
▼参考:「メタバースの不動産価格は活況を呈しています。その理由は」(WORLD ECONOMIC FORUM)
新しい顧客体験
よりリアルな環境を仮想空間上に構築することにより、新しい顧客体験をユーザーに提供できる可能性があります。例えば、観光などで事前知識についてはメタバース上で仮想ガイド(必ずしも人間である必要はない)が説明しておき、実際の観光地では、その情報を引き継いだ形で人間がガイドし、食事をしたり名所を巡るというやり方も考えられます。これはショッピングでも同じことであり、実際の店舗とメタバースでの体験をそれぞれ切り分け、さらにシームレスにすることによって、これまで経験したことのない感覚をユーザーに与えることが出来ます。
マーケティングとブランディング
メタバースの新たな仮想環境は、マーケティングやブランディングをするためにも有効です。韓国の現代自動車は、メタバース内で工場を設立し、メタバースの中で自動車を体験できる仕組みを構築しています。また、ディズニー(Disney)は、「テーマパークメタバース」のコンセプトで現実世界と仮想世界を融合させる試みを始めています。
▼参考:「メタバースがマーケティングのネクストビッグシングである理由」(Forbes)
▼参考:「ディズニーがメタバース戦略を主導するために元テーマパークの幹部を利用した理由」(digiday.com)
新たな収益源
NFTに代表されるデジタルの商品やサービスを作り出し、メタバース内で販売することによって、企業は新たな収益を得ることが出来ます。例えば、これまで現実の服を製造し販売していたGUCCIも、メタバースで店舗を構え、そこでの仮想のファッションアイテムを購入できるようにしています。リアルにだけ利用していたデザインをほぼそのまま流用できるため、過去のアーカイブデザインも新たな収益源として利用することができるため、各企業は過去の創作物の再活用を考えるべきでしょう。
▼参考:「NFTとは何か?ビジネスでの活用方法と事例を解説」
▼参考:「メタバースにおけるNFTの役割は何か?」(Forbes)
まとめ
メタバースは、世の中として概念としてもビジネスとしても立ち上がったばかりです。よって、基礎知識を身に着け、ビジネスをリードするジャイアントの動向を注視し、自身でも予測を立てて行動する必要があります。
もしメタバースビジネスを推進する際にお困りごとがあれば弊社もメタバースの事業開発支援を行っておりますので、気軽にご連絡いただければと思います。
この記事が新しい事業の構築に役立てれば幸いです。
参考とおすすめ記事
▼「メタバースは私たちの仕事をどのように変えるか」(Harvard Business Review)
▼「メタバースの約束と危険性」(Mckinsey&Company)
(https://www.mckinsey.com/business-functions/mckinsey-digital/our-insights/the-promise-and-peril-of-the-metaverse)